8月31日から、109たいのおばけをUPし、そのうち本物はどれだ? っていう企画をしていたのでそれを見て、思いついていくつか掌編を書いて見ました。
好き好き
枝娘という妖怪がいる。樹の枝を見ると娘の顔をした虫がいるという。その娘の顔は恐らく、恋しい人のもの。何を見ても彼女に見えるというのは、色恋に身を焦がしている時はよくある事。虫の形なのは、蓼喰う虫も好き好きということであろうか。
一夏の変化
あおじめ という物が出るとものすごく大きな実がなる。それは名のごとく大きな目玉だけどいつの間にか消えるらしい。今年はうちの畑にも出た豊作だった。自分も物凄く元気になり、頭も良くなった。違う人間になったみたいに。テケリと虫の鳴き声がする。自分の体にもあおじめできた。
ゆうがお
天窓から誰かが覗いている。引窓覗だ。黙って睨みつければ消える。一つ目小僧は家々を回り、善悪の帳簿をつけるというから、その一種だろうか。ただ、それが石洲女なら、気づいた事を知られていけないという。窓がガタガタとうるさい。立ち上がって顔を上げればそこに夕顔のような女の貌。
人生は重い荷を・・・
鳥が赤ん坊を連れてくるなんて嘘教えるのは駄目だ。しっかり教えておけば、了見が備わるってもんだ。あ、荷鷲は嘘じゃあはないぞ。どこぞのガキが悪戯したせいで荷鷲が落ちた事がある。そのせいで儂はあの世からのお迎えがいつくるか分からなくなっちまった。響甚兵衛(三二七歳 職業 農業)よりの聞き取り
狂劇花
酔って家に帰ると彼女がいた。ハイテンションで話してて涙が出てきて、もういないことを思い出した。彼女は悲しそうに笑んで消えた。鉢植えの花が咲いている。彼女の故郷に咲くという百合に似た花、やたらばな。人に化け惑わすいう花。綻んで彼女に会えるなら惑わされてもいいと思ったが、あれきり花は咲かない。