2012年11月18日

あなたへの手紙

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 君に恋人ができたと聞いた時は、嬉しく思いました。君は、我が娘ながらというか、というか、とても物語を愛する娘でしたね。
 子供の頃は桃太郎の嫁になりたがりましたし、次に仮面ライダーのヒロインに。もう少し大きくなってからはマンガやアニメを見ては、「××は俺の嫁」と繰り返して、重婚を繰り返していましたね。
 そんな君が、『私の彼氏は凄いんだよ。なんでもしってるの』
 そういった時は少しばかり心配になりました。高校生の時というのは、私からみると、まだ若さを残している大学生くらいの年の男子でも、大人に見えて、万能ぶ感じますからね。
 彼氏の写真なり姿が見たいというと、君は喜んでスマホの画面を見せてくれましたね。
 あれゲームじゃ無いか。
 そう、それは自分の理想のアバターを作り出し、会話を楽しむゲームでした。
 正直、笑ってしまった私を君は怒りましたが、あれは苦笑ではなく、安堵の笑みだったのです。君はまだ変わっていないと。
 
 それから数ヶ月後、君は生身の彼氏を連れてきましたね。彼は温和そうな青年で、頭も良く、君の事も熟知していて、正直安堵しました。彼なら大丈夫だろうと。
 君の友人や、私の周りの若い娘たちも同じ時期に理想の彼氏ができて、ああ、世間は春なのだと思いました。
 ただ、君が妊娠したと聞くとそうはいってられなくなりました。
 彼を探し出して話しを始めると、全く問題ないと彼は言います。お金の心配もないし、元気な子を生んで欲しいと。
 まるで他人事のような彼に怒りをおぼえたままでいると、彼は言いました。会社で巻き込まれている横領事件について。私は脅迫に屈しました。

 彼が用意した産婦人科は野戦病院であるかのようにの騒がしく、多くの妊婦がいました。
 新生児室を通りかかった私は愕然としました。そこにいる赤子たちは天使のように美しかった。しかし、子供のような生まれたてはみな猿の子のようなものです。しかし、その場にいた子たちの顔は。
 君の子供は生まれました。天使のように整って、しかし人間で無いそれ。
 私は彼を探しました。彼と思った男は別人で、建物の中の男達も、彼に似ている、いや殆ど同じような容姿である事に気づいたのです。
 彼が立っていました。
「君たちは何なんだ?」
 彼の温和そうな顔は変わりませんでしたが、化け物のように思えました。
「君たち」
 彼はそれで何もかも分かったように頷きました。そうして私の方に向かってきました。殺されると思いましたが、彼はそのまま脇を抜け、どこかに消えていきました。
 病院から全ての新生児は消えました。

 君は家に戻ってきても寝台から起き上がらず、窓から外の景色を見るだけの存在に。そんな君が今日は嬉しそうに微笑んでいます。
 そして今、空一面に浮かび無数の円盤。君は外に飛び出していき、戻ってきませんでしたね。

 私は筆を置いた。
「お父さん」
 娘の声。いや、それは娘では無く君に似た誰かの声。新しい『彼』の眷属。
「見てみてこれ。アスミンは俺の嫁なんだよ」
 まがいものの君。しかし、幸せだった頃の君を思い出すこの煉獄。
posted by 作者 at 01:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 短編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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