2012年11月25日

冬の罠


即効小説トレーニング http://webken.info/live_writing/try.php さんで書いたものに+したもの最初のはこっち

http://webken.info/live_writing/novel.php?id=24390

「まあ入ってください」
 そう言われて僕は炬燵に入った。この寒い時期に炬燵は魅力的だ。ミカンに炬燵に猫。この三つが揃っている空間は、天国であり、誘惑に抗するのは難しい。
 もう勝てるわけはない。
 僕は炬燵に入った。
 入ってから、あれ、今言ったのは誰なんだろうと思った。第一僕の周りには誰もいないんだから。そもそも僕はどうして炬燵に入っているんだ。
 酒を飲んで気持ちよく電車にのって、帰宅するところだったよな。
 炬燵には沢山の魅力がある。かつて多くの物書きが炬燵に関しての作品を残している。
 『風流諸国炬燵話』
 『炬燵: 行火とその周辺』
 『炬燵学習』などだ。
 彼らにとって炬燵の経験というのは、恋愛の話と同じくらい、人心に親しいものだったのだろう。
 とか考えていたが、もう炬燵の事で頭がいっぱいでどうでもよくなってくる。

 ちんちんと遠くの方で音がした。

 ああ、何の音だろうと思う。

 ちんちんと音がした。

 何か人の声も混じっていた気がする。

 ちんちんと音がした。

 側でする。何かを嚼んでいる音がした。 

 ちんちんと音がした。

 今度は自分の真下で。
 我に返った。足下にに引きずり下ろされた。
 落ちていきながら、団欒とした夕日のような灯りが見える。それは暖かい炬燵の本体。それは一つではなかった。
 数多の炬燵が、雑多に置かれている。
 炬燵には気をつけなくてはいけない。
 そうここは冬の恐ろしい罠。
 異界へと通じる炬燵の穴。
posted by 作者 at 18:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | 短編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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