2013年03月14日

揺籃の乙女

 除霊というのは複数の要素を持っている。
 多くはただ話して終わらすだけだ。生きている人間の。だから、家の持ち主や、近所に話を聞いて、解決する場合もある。勿論そこに霊という要素はない。
 しかし、人間の仕業とは思えないようなものが、数年に一回ある。今回はそのケースのようだった。
 古びた屋敷だった。山中にあるのが異様と思えるような西洋風な建物。黒曜館という。かつてこの辺りに鉱山があった時は、帝都から来る人間を歓待するのに用いたという。その後はホテルとして使われたが、犯罪者が立てこもる不幸な事件があり、それからは閉鎖された。その後、web上に、廃墟物件としてさらされ、一部の好事家の目を楽しませる事になった。その廃墟を見に来た人間が数人あまり行方不明になったという。
 行方不明に関しては噂でもあるし、実際の話とは分からない。しかし、この一角が売られる事になった為、調べる事になったのだ。
 調べたところ、実際に十数人も行方不明者が出ていた。
 屋敷の中に入った。清潔感を感じさせる空気だった。恐らく売られる前に、換気が行われたのだろう。
 進んでいくうちにそれは間違いなのに気付いた。
 清浄過ぎるのだ。普通こうした人の入っていない場所は空気が淀む。
「早くここを出ましょう」
 女の、彼女の声がしたが素直に従うわけにはいかない。
 屋敷の中を歩き回り、何もないことを確認した。霊も人もいない。まだ下調べが必要だ。

 街に向かう旧式のミニの揺れる運転席の中で、思い当たる節があった。あそこはもしかしたら浄化する何かがあるのかもしれな。魚は清すぎる水にはすめない。それと一緒で清浄過ぎるとよろしくないのだ。 
 バックミラーに人影が映る。山道とは言え、60キロは出しているから、人間が近づいてこれる早さでは無い。窓が叩かれた。そこには老婆が走っている。目が合った瞬間、金縛りになる。
 これはまずい。
 老婆が悲鳴を上げた。とたんに自由になった。
 助手席には鮮やかな赤い着物姿の彼女が座っていた。髪をお下げにした十代の少女だ。眉毛は不機嫌なようで上がっている。可愛いよりは綺麗によったその顔はあきれているように見える。
「あんなところにいけばその後襲われるのは分かっていただろ。今のお前は清浄では無く空白だ。簡単に雑霊に襲われる」
「そしたら君に会えるかと思って」
 彼女は不機嫌そうに頬を膨らますと消えた。
 まあ、いつか会えるだろう。
 彼女の不機嫌なのはもっともだ。
 曾祖父により戦時中殺され人柱にされた彼女は『七代祟る』といって死に、怨霊となた。普通なら七代の間恐ろしい目にあい、正気を失いながら死ぬのがセオリーだろう。
 ところだ代々、酷いことをしていた我が武部一族は多くの呪いがかけられていた。放っておけば彼女が手を出す間も無く滅びかねない。
 気付けば彼女は悪霊ではなく、守護霊のような存在となって、闘っているのだ。
posted by 作者 at 01:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 短編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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