2011年08月15日

真実

子供の頃、怖い夢をよく見た。母が長く入院していたし、父も夜勤だったから、家に一人だった。ある夜、猫に誘われて家を出た。公園、学校、病院、神社、墓場。明けない夜の中でさまよっているうちに、怖い夢は見なくなった。いや、今でも見ている。ただ、血肉のように当たり前になってしまっただけだ。
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2011年07月26日

猫とトイカメラ

 旅に出た。
 適当に神社に入る。茂みの中でガサガサいうので覗いたら、ドット柄のワンピースが見えた。ただ顔が靄がかかったように見えない。幽霊と思うとすぐに消えた。
 背後でシャッター音が響いた。追いかけると猫がいるだけだった。ただ、首輪には小さなトイカメラがつるされている。
「おい、写真とるなら、声をかけてくれ。それともこれで魂でも奪おうという算段かい?」。冗談で猫に話しかけると「許可をとらなくて悪かった」という。
 理由を聞くと、亡くなった主人の写真を写しているという。幽霊かと聞くと、猫は「非科学的だね」と笑った。
 雨が降ってきた。猫に雨宿りを勧められた。
 猫の部屋には、主人の写真や思い出、形見を見せて貰った。
 主人の写真の多くは顔が見えずにもやがかかっているように見える。でも古い物に連れて鮮明になってくる。幽霊ではなくて、あの主人はこの孤独な猫の幻なのだろうか。
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2011年04月23日

隠れん坊

 昔、姉と隠れん坊をした。隠れるのが得意だったので、なかなか見つからない。姉は苛々してきたのかちょっと怒っている。それが楽しくて笑い出しそうになる。直ぐ側まで姉が来た。頑張って息を潜めた。聞こえるのは犬が唸っているような呪いの言葉。そこで思い出したのは自分には姉はいない。という夢
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2011年03月27日

繰り返す

 闇の中、何かが倒れる音で起きた。寝床から起き上がる。停電である事を思い出し、懐中電灯で照らす。誰かが倒れていた。近づいてみれば寝間着姿の男だ。泥棒にしては妙な事だ。顔を見れば俺。意識を失った。顔が熱い。懐中電灯で照らされている。その方を見れば俺だった。俺は倒れ大きな音を立てた。
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2009年01月21日

父の死




 

 数日前から体調が悪い。今年のカゼは腹にくるようで、下痢が数日続いたところで体力がなくなり、最終的には体に来るようだ。
 そのせいで金曜の夜だというのに、まっすぐ帰宅し、そのまま眠り続けていた、
 起きたのは一本の電話だった。
 叔父からだった。
 こうして電話がかかってくるのは葬祭の時だけだから、礼服をクリーニング屋に取りに行くことを考えていた。
 土曜が潰れるのは痛いが、それでも休みを取るために高橋部長にぐだぐだ言われるよりはずっとました。
「学が、お父さんが今、病院から連絡があって」
 礼服は必要ないようだった。

 父は安らかな顔で眠っていた。いや眠っているように見えた。
 大きなベット。その上で父の体は記憶の中よりずっと小さかった。髪は随分下がっておでこが広がっていた。
 なにより動かない父は父ではなく物のように思えた。
「お父さん」
 でも声は物を呼ぶのはでく、生きているお父さんを呼んでいるときと変わらなかった。

 父親はいい父だったと思う。
 人がよく面倒見がいい。手先が器用で苦手なものがない。その性質は家族や、知り合いにだけ回っていればいいのだが、時には女性に向くこともあった。それがトラブルの原因だった。
 気付いたのは小5の時だが、それまで多くあったらしい。
 それでも家には帰ってきたし、弟が生まれたし、そんなに危機を感じたことはなかった。
 でも、自分が高校生になる頃には、父はもう家に戻らなくなっていた。自分が就職してからは家にお金もいれなくなっていた。

 家を出て初めての連絡を受けたのは社会人になって数年後の冬の事だった。
 喫茶店であった。
「どんな仕事だ」
「事務だよ、けっこう大手の会社の下請けだけど潰れそうにはない」
「そうかよかったな」
 10分ほど話して別れた。
 二度目は夏だった。
「仕事はどうだ」
「まあいろいろあるけどとりあえずやめないでいけそうだよ」
「一週間、一ヶ月、三ヶ月、一年というからな」
「そうだね。確かに一週間目は辛かった」
「あのなちょっとお父さんこれからお葬式にいくんだが、ちょっとカードを忘れてきて」
「ああ、いいよ」
 5万だった。
 父は唾を手に付けて金を数えた。

 それが始まりで何度となく父から金を貸してほしいという名目で連絡があった。
 毎回、「今度は返すから」といいながら、手に唾をつけて金を数える父。
 言葉はいくらでも送られたが、実際に返された事は一度も無かった。
 別にそれはなんていうことはなかった。人にお金を貸すときは返ってこない物だと思え。そう教えたのは、幸せな記憶の中の父だった。
 それでも我慢しきれず殺そうと思った事がある。
 師走。
「五十万を貸してもらえないか」
 ボーナスと、その月の給料を合わせれば、渡せない金額ではなかった。
 結局、渡すことにした。
 かすがいとして役にたたないと、母親に思われていた弟、彼はその年就職をして、自分の生活を始めていた。
 自分が渡さなければ弟にたかると思えたのだ。弟は拒絶するだろうが、父に金を強請られるあのみっともない気持ちを弟に味合わせたくなかったからだ。
 仕事が終わり、もう閉店間際の喫茶店で金を渡し、父の言葉も聞きたくはなかったので、さっさと立ち去る。
 夜気が忍んできた。
 思わず立ち止まって、手に息を吹きかける。
 足音がした。
 父が走ってきていた。
 もしかして、何かいってくれるのだろうか。
 子供の日の大きかった父の事が思い出された。
「金が二万足りないんだが」
 その時、車が来たら恐らく、車道に向かいって思いっきり父を押していただろう。

 今そう思っていた父が眠ったようになくなっている。
 連絡がきて、すぐ車を飛ばしたが、間にあわなかった。
 死因は、この病院に運ばれた時は、全身にガンが転移していたという。爪からガンになった細胞が黒く透けて見えたという。
「お父さんが一度でも返してくれればよかったのに」
 毎回、お金にほんの砂粒の一つもセシウムをのせておいた。父がなめるであろう指の位置につくように。
 セシウムはガンの抑制に使われる反面、発ガン性が高まるかもしれないとされる物質だ。
 父の吸収したセシウムはどっちに転がったろうか。それは中国の蝶や、箱の中のネコ。
 病室を出ようとすると枕元に封筒があった。
 宛名は自分の名前だった。開いた瞬間、笑いが止まらなくなった。
 そこにあるのは請求書だった。


 
 
 
 
 
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2008年08月17日

病院で



 母のお見舞いに行った。
 リハビリに出ているところで姿はない。
 見舞客用にイスに腰掛け、母を待つことにした。
 女性しかいない部屋なので、看護師の方が患者さんに尋ねる話など聞いていると、どうも居心地が悪い。
 そこでヘッドホンを付けて音楽を聴いていた。
 六人部屋の真ん中なので、窓も廊下も見えない。動く物が見えるのはカーテンの足下の隙間から見えるくらいのものだ。
 懐かしい小学校で使うような上履きが通り過ぎて、母のベットの横、窓際に入っていった。
 子供がいるんだ。
 テレビもない病室ではきっと暇な事だろう。
 そんな風に思っていると母が戻ってきた。頼まれていた雑誌などを渡すと、どうも暗いようで見えにくいようだ。
 母は隣との境となっているカーテンに手をやった。人がいるからという制止の言葉を笑って受け流し母はカーテンを開いた。
 明るくなって、雑誌もよく見えるようになった。
 母の不作法をわびようとした。隣のベットには誰もいなかった。
「そこのベット昨日からあいているの」
 日差しは暑いくらいだったけど、反対に僕はとても冷えていた。
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2008年06月07日

終点




 電車を乗り過ごした。
 毎日乗っているが終点までは来たことがない。
 終点だから外に出ればそれなりに泊まれるようなところなどはあるだろうか。
 電車の外に出た。
 空には星空が広がっていた。
 回りには影絵のようにシルエットだけしか見えないが、戦前の都内のようにレンガ造りの時計塔が立っていた。
 改札の上には風雨を防ぐようなものはなく、ただ改札口だけが置かれている。そこを見て初めて気付いた。ここは駅舎の中だということに。
 空に写る星空もただの作り物なのだ。
 旅人が一歩踏み出せば過去に戻れたかのように作られているのだ。
 しかし、それは僕の知る過去の姿とは違う。むしろディズニーにでも来たときのような気持ちを覚えた。
 ありはしないが懐かしい景色。
 早くいかなくてはいけない。そう思い改札の外に出た。
 外にいけば、星空が広がっている。
 普通の星空に安心する。
 でも、ここが本当に外だとは解らない。あの星空の向こうに見える空が書き割りでないと誰がいえるだろう。
 そう思えば星空が近づいてくる。書き割りが倒れたのだ。
 

「朝よ」

 夢だった。

 寝過ごした。
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2007年10月21日

眠れない日は寝付きが悪い


 風邪をひいたのです。
 病院の薬でも治らないので、どうも疲れのせいだろうと先週は家で寝てました。だいぶ良くなったと思ったら、今週仕事が期末時期なんで忙しく、またもとの状態に。

 夜も頭痛と吐き気のせいでなかなか寝付けず、どうにかうとうとというところまで、鳥の鳴き声がします。朝かと思って目を開けるとまだ夜中です。
 咽がひどく渇いて、外に飲み物でも買いにいこうとすると、外でネコが忙しい声で鳴いているのが聞こえます。外に出れば間違いなく相手をさせられます。そう脛擦りの原型はこれなんじゃないかとばかりのまとわりつき具合です。

 布団に潜っても乾きは耐え難く、ネコの声も大きくなる一方なので外に出ました。
 外に出ると予想通りネコがじゃれてきます。エサが欲しいようですが何もないので仕方なく、財布の中からレシートを一枚だして放りました。その音に答えてネコは去っていきます。何かもっけのようだと思いながら、自販機でジュースを買い戻ると、ネコは静かになっています。いえ、低くうなっているのです。だましたことを起っている。と思うと違います。
 うちの上は崖というほどではないのですが段差の下の方に家があり、ちょうど二階と隣の家の一階が同じ高さになります。
 その隣家の庭にある植木で鳥が朝なくのです。夜はいつもはなきませんから、雛でも落ちたのかもしれません。
 ネコはそれを気にしているのでしょう。
 
 部屋に戻り、アクエリアスで咽の渇きをいやしました。窓の方で音がします。もしかしたら落ちた雛でもいるのかもしれない。
 そう思って窓を開けると、色の白く見える子供が寝転がって騒いでいます。
 こんな時間に、と思った時、子供が一人ではない事に気付きました。微かな光のせいで、はっきりとは見えませんが、庭にびっしりと寝転がった子供たちの姿。
 こんなわけはない。
 寝ぼけていると窓を閉めようとすると閉まりません。何かがひっかっている。
 足下で子供が一人転がって足をつかんでいました。

「ししょー朝ですよ」
 携帯がなっています。
 まったく調子の悪いときの夢見は悪い。アクエリアスをのみながらそう思いました。
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彼岸会




 仕事で出張して帰りが夜中になってしまった。
 自分の運転は「殺しのライセンス」と呼ばれ、社内では自分の運転に同行するものはいないくらいの物騒なので、運転は心許ない。
 オマケに慣れない山道はくねり伸びて大きな蛇の背でも走っているようだ。
 集中して運転していたせいか頭痛がひどくなってきていた。このくらいならと思って走っていると目の前をちらちらと暗いものが飛ぶ。目にも疲れがきている。
 路肩にクルマを止めて一休みする。
 外に出ると空を見ると星に溺れそうだ。そして吐いた息が白い。このままヒーターをつけてクルマで寝ているかと思うが、ガスがあまりなかった。

 どこかにガソリンスタンドでもないかとカーナビを拡大してみると、見覚えのある名前があった。
 笛を吹き続けて息絶えた少年の伝説を持つ川。そう父親の実家が近い。
 電話番号は覚えてないが、場所は憶えている。父親が不始末をしでかしてから十数年いっていない。どうするか。

 昔は大きく思えた家も今は小さく思えたが、山に張り付いたようなという印象は変わらない。その山の澤でさわがにをとったり、鹿やクマを見たのを思い出す。

 近づくと庭の暗がりに犬。子供の頃、うちで飼っていたコマだ。近所の犬を追いかけてノイローゼにしてしまって田舎に連れてこられた。最初うなられたが、名を呼ぶと静かになった。

 叔母が出てきた。こんな時間に不意に尋ねた非礼の詫びと、理由を話す。子供の頃に何度か泊まった事のある部屋に通された。暖かい地域に住んでいるこちらに気を遣ってくれたのか湯たんぽを出してくれる。

 朝、居間にいくと、煮物、漬け物を中心に、いつもはみないような大量の料理。朝から味噌汁のかわりにそばが出るのは祖父が好きだからだと思いながらいただく。
 子供の頃は苦手だったこういう食事も今となってはありがたい。

 起きてきた祖父と祖母。叔父と叔母も姿を見せて、話し始める。なまりの深さは変わらずで、よく考えないと分からないことも多い。近頃の事、家族の事。途中酒を勧められて困る。

 どう帰るのか話し始めているうちに、気付いた。
 ここにいる人たちは自分と同じ年か、ほんの少し年上に見える。
 コマを飼っていたのは四半世紀も前で、もう生きているわけはない。

 周りにいるのは彼岸のものばかり。死者は一番元気な時の姿で現れる。

 コマが一声鳴いた。田舎に置いてきた時に聴いた悲しそうな声。

 目が覚めた。起きるとひどく頭痛がした。
posted by 作者 at 17:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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