2014年06月20日

よろこぶ鞄 #フォロワーさんからタイトルもらって文章書く で氷泉から貰った奴で

 鞄が意識を持ったのは、店先のショーウインドだった。自分と同じような、あるいは全く違う鞄たちは次々と売られていく。
 気づけば1年が過ぎ、流行も代わり、ショーウインドから、店先のワゴンに置かれた。
 それでもまだ買い手がつかず鞄は悲しい思いを抱いていた。もう同じ頃に扱われていた鞄はいな。
「蹄鉄のマーク・・・じゃあ、これでいいだろ」
 乱暴に鞄は連れ出され、女の子手の中におさまっていました。綺麗なかわいい女の子。
 鞄はこんな人に買われて、一緒に道行けたら、何と幸せな事だろうと思いました。
 しかし、鞄は女の子の家に持って行かれても連れ出されることはありませんでした。そう女の子の欲しかったのは鞄に似た、でも鞄の新しい流行をとりいれたものだったのでです。
 鞄はクローゼットの中に押し込まれました。悲しくて鞄は眠ることにしました。
 乱暴に鞄は連れ出されました。中にぎゅうぎゅうにものを入れられ、きつく口をしめられます。
 鞄は思いました。もう寂しくない。だって、こうして持ってもらえたんだから。使われなかった鞄はついに待望のたくさんの入りきれない荷物を入れて、女の子とおでかけできたのです。
 鞄がやってきたのは海です。
 乱暴に鞄は海に投げ込まれます。あれ、そう思っている間に鞄は沈んでいきます。 でも鞄は幸せでした。
 女の子とずっと一緒にいられると思ったからです。女の子の綺麗な顔を詰め込んだまま、鞄は水底へ
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2012年11月11日

East Of Eden

即効小説トレーニング http://webken.info/live_writing/try.php さんで書いたものに+したもの。
最初のバージョンはこっち http://webken.info/live_writing/novel.php?id=4535

 時間が過ぎていくのが分かる。僕はどうしてもその先にいかないといけないのに。どうすればいいのだろうか。

 『EOfE』に出会ったのは。よくあるゲームのつもりだった。iPhoneのアプリをダウンロードし、始める。
 最初は借金を背負わされる。といっても実際の金でなくポイントだ。そのマイナスになっているポイントを様々な行為で減らしていく。
 例えば、様々な場所を巡り、タグ、地域によって置かれているマーカーを集めていく。そうしていくうちに仮想空間の方にも自分の世界ができてくる。
 そこはユーザーにより天国のような世界だ。自分で作る世界。それを好きなもので、満たしていくのが楽しい。
 そうして楽しんでいるうちに知りあいができてきた。
 暇をもてあました主婦、疲れ切ったおっさん、大麻が好きで海外にちょくちょくいっている地下アイドル、進学校に通う高校生。田舎から出たいと嘆く地方公務員。
 ちょっと名前だけ分かっているやつもいた。
 知り合いや、顔見知りはひっきりなしに、現れては消えていく。
 ちょうど大きなプロジェクトに関わったせいで僕は『EOfE』から離れた。
 日常もしっかりこなせばそんなに悪いものでは無い。トラブルに巻き込まれるのもイベントの一つだし、嫌な奴に頭を下げるのもスキルを習得し居ているのだと思えば悪くない。現実も一つのゲームみたいなものだ。そして自分の力ですら大きなものを動かしていくのも分かるのもいい。一部であり、同時に全体に似た、相似形だから。
 プロジェクトが終わり、久しぶりに『EOfE』を開いた。確認すると前までいた知りあいは殆どいなくなっていた。この手のモバゲーにととっては珍しいことじゃなない。システム的には、みんな似ているから、完全に辞めるのは難しくとも、あっさり新しいものに移っていく人間も多いから。
 開くと声をかけてきたのは地下アイドルのコだった。アイテムが欲しいという。少し意地悪く『え、これは貴重品だから』。そういうと、彼女がいってきたのは、いくらほしいか?という言葉だった。あまりに真剣だったので、彼女に譲った。アプリに奇妙な画面が現れた。そこは楽園だった。自分のでは無い、彼女がほしがっていた楽園。
 上方か、下方かは分からない。彼女はどこかの世界にシフトしたのだ。
 『EOfE』、East Of Eden、聖書に約束されたエデンの東にある楽園。
 自分が取り残されたのは本能的にわかった。 彼女は自分の作った世界にいったのだ。
 僕は・・・・
 エデンの向こうには、もういけない。東の地に僕はいない。
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2011年10月25日

今も―出る―ぞ 油すましの初恋より

 いつもの通り、峠にきたものの前に、でっかい油瓶をひょいと吊るす。
 だいたいは声を上げて逃げるんだが、そのガキは違った。見てくれから飢えていて本当に餓鬼のようだったが。
「どうして油瓶さげてるの?」
 声だけは清水のように綺麗だ。
 ガキと目があった。そもそも俺らのようなものは意味が無い色即是空なもので、人の色に反応するような空々しいものだ。人に見られると初めてそこに在るようになるのだから黙っていればいいのだが、「そういうものなんだよ」
 答えたのがまずかったのか、ガキはそれから毎日のように来ては、いろいろな事を聞いてきた。
 ガキにしては、海の向こうはどうなってるかとか、勤王がどうのとか、色々聞いてきた。
 江戸に黒船が来て、どこもかしこも大騒ぎだった。まして天草は切支丹の話が続いているかのように、外様の地にあるのに、幕府の預りで、色々と難癖つけられるまな板の上の鯉のようなものだった。
 ある日はガキは来なかった。次の日も来なかった。
 ああ、ガキだから飽きたのだと思ったが、どうも落ち着かない。
 やっとガキがきた。文句の一つでも言おうかと思ったが、顔が腫れている。殴られたようだ。
「どうした」
 いつもならたんぽぽのタネのように軽い口が一向に開かない。しかし、わかっちまった。
 どこぞの芋侍が因縁付けて暴れては、村人がやられているらしい。
 翌日、ガキは蒸気船ならぬ上機嫌で来た。
「お前さんでしょ」
 芋侍の前に、切れた手足やら生首やら放って驚かしてやった事が伝わったのだろう。
「まあな」
 それからガキは毎日のようにくるようになった。
 ガキは、餓鬼のようだったのが、人になり、天女のようになり、それに連れ来ることも少なくなり、ある日を境に全く来なくなった。
 天女だったから、六道の上がりになって、お陀仏になっちまったのかもしれねえな。
 俺は峠にとどまって、元の行いに戻る事にしたが、前のように通りかかったものを脅かすのができなくなっていた。
 ああ、俺はもう空ではないのだ。すっかり人の色に染まってしまった。
 峠の岩に座り、俺はぼんやりと時を過ごすことになった。いつの頃か、また俺は俺ですらなくなり、峠に溶け込んでいた。
 懐かしい気がする。餓鬼のようなガキがかけてくる。ああ、きって考え続けてしまったせいで、とんだものを見ていやがる。
 人なんて直ぐに消えちまうんだから。ましてガキであるわけはない。
「おばあちゃん早く」
 婆が歩いてくる。
「昔この所に油ずましが出ていたんだよ」
 どうも天女から餓鬼に戻ってしまったようだが、清水のような声は変わらない。
「今も―出る―ぞ」
 婆は餓鬼にも天女にも仏にも見える顔で笑った。
 



 打田マサシさんのイベントに、妖怪たちのいるところ4で、妖怪大喜利というコーナーがありまして、そこで『油すましの初恋』というお題がありました。非常に面白かったのですが、その時、こう言葉でもやっとしたものがありまして、ちょっと今夜は時間があったので話にしてみました。
 



 元ネタは所謂

熊本の天草郡栖本村字河内(現・天草市)と下浦村(現・同)とを結ぶ草隅越という峠道を、老婆が孫を連れて通りながら「ここにゃ昔、油瓶さげたん出よらいたちゅぞ」と孫に話していると、「今もー出るーぞー」と言いながら油ずましが現れたという。



「うそ峠」という場所を通りかかった2人連れが「昔ここに、血のついた人間の手が落ちてきたそうだ」と話すと「今もー」と声がして、その通りの手が坂から転がり落ち、2人が逃げ切った後に「ここでは生首が落ちてきたそうだ」と話すと、また「今ああ……も」と声がして生首が転がり落ちてきたという。

 
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2011年08月09日

嘘をつく

tikutakuさんは、「深夜のソファ」で登場人物が「嘘をつく」、「魔法」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://t.co/x2r6tV0 #rendai

起き上がれば深夜のソファ。疲れ切って帰ってきてそのまま眠ってしまったようだ。こんな風に仕事の為だけに生きているなんて意味あるのかな。携帯がなった。出れば「大丈夫ずっと一緒にいるよ」。彼の声。元気が出る魔法の言葉。きっとしっぽがあればピンって立っている。でも、彼はもういない。
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おお@

tikutakuさんは、「夕方のソファ」で登場人物が「恋する」、「風」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://t.co/x2r6tV0 #rendai


辛い西日に目を覚ます。窓辺のソファに転がっていた。カーテンが開きっぱなしだ。朝、仕事から帰ってきてそのまま寝室にいくのも面倒で横になったのを思い出す。窓を開く。風が吹き込んだ。熱を帯びた大気の中、涼やかな薫り。目を向けると、そこに立つ人影。よく見ようと背筋が伸びた。恋していた。
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一件家二階の窓

酔って歩いていたら綺麗なハミング。音の方を見ると、一件の家。二階の窓、少女が腰掛けて歌っていた。新月の夜で、星の冷たい光が照らしていた。暫く聞き惚れていたんだけど、闇の中に少年が一人。きっとこの曲は彼の為なのだろうと思って悲しくなって後にした。それからあの二人を見たことはない。
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2011年07月30日

いときめき

tikutakuさんは、「早朝の映画館」で登場人物が「ときめく」、「糸」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://shindanmaker.com/28927 #rendai


朝の映画館。上映しているのは何年も前のもの。簡単にいい席をとることができた。上映中はずっと目が離せなかった。映画ではなく、前に座っている女の子のせいだ。声をかけたい。彼女のセーターの上に糸屑が見えた。これだ、「ついてますよ」ぽんと彼女ははじけて消えた。残っているのは糸屑とときめきだけ。
posted by 作者 at 05:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | 掌編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月15日

tikutakuさんは、「昼の遊園地」で登場人物が「選ぶ」、「糸」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://t.co/x05LQMW #rendai


同じ単語から連想した2つの話



昔から見える赤い糸。昼の遊園地に伸びている。祭日、無数の人。数時間探しても見つからず疲れ切った。悲鳴。ジェットコースターのレールが壊れている。落ちていく子供。飛び出した。受け止めた腕には激痛。死んでないだけました。赤い糸は半ばから切れていた。子供の小指からも半ば途切れた糸が。するっと結びついて絆に変わった。

傀儡
 昼の遊園地にいたはずなのにすっかり夜中になっていた。うたた寝してしまったのか。誰かが近づいてくる。助かった。いや、その口は助けを求めている。操り人形のように糸につられていた。気づけば自分の手足にも糸がついていた。出番は近いようだ。
posted by 作者 at 22:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | 掌編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月26日

インフォームド・コンセント

tikutakuさんは「坂道」で 登場人物が「滴り落ちる」、「コンセント」という単語を使った怪談を考えてください。



新商品の強壮薬は素晴しい。坂も平地のようだ。坂を何かが降りてくる。人程もある巨大な蛞蝓だ。体液を滴り落としながら進む姿は醜悪だ。蛞蝓が飛び込んだ先は薬を買った食料品店だった。店主は「説明と同意はすんでいます」と言いながらその蛞蝓に塩をかけ始めた。縮んでいく姿は薬に似ていた。





新商品の強壮薬は素晴しい。坂道も平地のように思える。気持ちよく歩いていると汗が滴り落ちる。気づけば一匹の蛞蝓と化していた。そのまま薬を調合した店に飛び込んだ。店主は一枚の紙を差し出しながら「説明と同意はすんでいます」。書面を見ると汗が出てきた。その書面にはこの姿になることも記されていたが、そんなことではなかった。この姿になったものは次の・・・
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2011年05月21日

獏喰え

 怖い夢や、嫌な夢を見たときに、「獏喰え」と三度いえば、悪夢は消えるという。起きた今も悪い夢を見たことを覚えている。ぐっしょりとした汗を感じながら、思い出して唱えてみた。「獏喰え」、「獏喰え」、「獏喰え」。悪夢は見なくなった。いや、何も見なくなった。そう、私もまた悪夢だったのだ。
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おどりぐい

tikutakuさんは「スナック」で 登場人物が「折りたたむ」、「実験」という単語を使った怪談を考えてください。 http://shindanmaker.com/114254 #kaidan_odai_jyo



 ちょっとした実験なの。そう彼女はいうと唇を押しつけてきた。半ばかむような感触に慌てて逃げる。ここはスナックでそういう店ではないのに。彼女は小さく笑った。鬼太郎に人魂の天ぷらってあるでしょ。だから幽霊って食べられるのかなって。彼女は僕をとらえ、口を大きく開いた。
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2011年05月19日

お多福

tikutakuさんは「アパート」で 登場人物が「徘徊する」、「焼き肉」という単語を使った怪談を考えてください。 http://t.co/32Vc3Pt #kaidan_odai_jyo

 自宅アパートはいい匂いがした。夕飯は持ち帰りの焼き肉だった。産地直送で新鮮が売りの露店で買った。残り一つで幸運だった。食べてさっさと眠りについた。いいタレの匂いがした。暗がりの中を何かが徘徊している。起き上がろうとすると体が動かない。店主だった。「今日の分の売り物になってね」


 夕飯は焼き肉だった。産地直送で新鮮が売りで美味い。追加を頼むと終わりだという。お多福顔の店主はすまなさそうに頭を下げてビールをサービスしてくれた。帰り道、何かが徘徊している。自宅アパートが見え始める。目の前にはお多福が。後ろにも。周りには無数のお多福が。「追加分今できるよ」





 決め切れませんでした。
 制限時間30分では。
 どちらも今ひとつ。

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2011年05月17日

白い花



tikutakuさんは「浜辺」で 登場人物が「破裂する」、「扇子」という単語を使った怪談を考えてください。 http://shindanmaker.com/114254 #kaidan_odai_jyo

浜辺で彼を待っている。人影が見える。手には花束。胸が破裂しそう。まともに顔も見れず扇子で顔を隠す。手が届くまで来た彼は花を差し出して、砂浜に置いた。弔いの白い花。そうだ。私、あの日、好きだっていわれて、驚いて胸が破裂して死んでしまったんだ。私も好きだよ。返事は届かず海風に散った。
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2011年04月30日

誘蛾灯

tikutakuさんは、「夜のコンビニ」で登場人物が「貪る」、「花」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://shindanmaker.com/28927 #rendai


 夜のコンビニは誘蛾灯。ひかれるのは夜の蝶ではなくて孤独な人。夜中に独りでいると感じる飢え。スナックで体、人を見て心。貪って一時おさまるけど満たされてはいない。本当の飢えを満たすのは何だろう。答えは目の前にあった。「ありがとうございます」。向日葵の花のような笑顔。一目惚れした。
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2011年04月29日

食合禁

tikutakuさんは「朝食」で 登場人物が「破裂する」、「衣装」という単語を使った怪談を考えてください。 http://shindanmaker.com/114254 #kaidan_odai_jyo


 ホテルの食堂、朝食に筍の煮物が並ぶ。旬のものがあるのは嬉しいことだ。一口食べると春を凝縮した味が衝撃の様に広がったと思うと、体中に満ちて爆ぜた。食堂は破裂した血肉で彩られた。食い合わせが悪いと寄生した体は劇的に反応する。私は新しい衣装を選ぶことにして、手近な人間に襲いかかった。
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2011年03月12日

ロザライン

 キャピュレット老が一族の墓所を訪ねたのは、夕刻に近い時間であった。そこは一粒種であるジュリエットが、一族のものと共に眠っている。
 老がジュリエットを思わぬ日は無かったがいつも亡き彼女を思うのはここではなく、ヴェローナの街の誉れと言われるジュリエットとロミオの像の前だ。
 ジュリエットが、仇敵であったモンタギュー家のロミオと恋に落ち、様々な誤解の末に、胸を刺して亡くなったのは数年前の事。
 一族同士の憎悪は、二人の死によって、取り除かれ、和解がなった。
その証として、モンタギュー家が作った貞節を示したジュリエットを記念して作られた黄金の像の前だ。そのジュリエットの横にはキャピレット卿が私財をなげうって作られたロミオの像が置かれている。二人の姿をにせたそれは、生前には得ることが出来なかった愛をはぐんでいる。
 像がある大通りは今日は、太公殿下に客人が来るとのことなので閉鎖され、老は一人で訪れていた。
 一族の墓所は日頃は警備され、人が居るのは葬儀の時くらいのものだ。今日は一族のもの太公の主催する宴に出ているはずで、来るものなどないはずだった。
 だが、人影が一つ、墓所の前にあった。
「ジュリエット」
 老は愛娘の名をつぶやいていた。
 夕焼けの中、手に身を染めて立つ黒い喪服の娘はジュリエットによく似ていた。
「おじさま」
 若い娘の言葉に老は、我に返った。
 そこにいるのは、誰あろう。
「我が麗しの姪殿であったか」
 そこにいるのは姪のロザラインだった。ジュリエットによく似ているのも納得できた。ジュリエットも我が子であるのを抜いても花のような娘だったが、ロザラインも負けず劣らず美しい花だ。
「ありがとうございます。おじさま」
 ロザラインはほほえみを浮かべた。墓所には不釣り合いな暖かな笑みだ。
「今日はジュリエットを思ってくれているのかね。いや、ここにはティバルトも眠っている。親ばかというものは娘がいなくなってからも続くものだね」
「おじさま、ジュリエットはとてもよい娘でした。花のような顔も、水のように澄んだ心も」
「ありがとう姪殿。ああ、このように亡き子の事なかり思うのは、一族の頭領としてはあるまじき事だ。姪殿はジュリエットよりも年長だったな。そろそろどこかに嫁ぐ話などないのかね。もし、あるのならいつなりともいってくれ」
「ありがとうございます。私はどうもそのような気持ちにはなれなくて、ジュリエットや、ティバルトの亡くなった三年前から年など止まってしまったように思えています」
「それはよろしくないな。良家の子女というものは」
 言いかけてから老は苦笑した。
「いや、好きになさい。全く我が子を追い詰めたというのに、こびりついた考えはなかなか変わらぬものだな」
「そのおじさまの寛容がヴェローナの街を、変えていると思います。街で顔を合わせばいがみ合っていた一族が今ではモンタギューのものとあっても笑顔で礼をし、友好のキスを交わします」
「それはなあ、ジュリエットと、あのロミオのおかげだ」
 老とロザラインの間に沈黙が広がった。まるで亡き人がそこにあって、二人を見つめているように思えた。
「ご主人様、奥方様からお使いが」
 静寂な空気を切り裂いて現れたは召使いだ。
「ああ、分かった。姪殿はどうするかね。もし、戻るのなら一緒の馬車で」
「いえ。もう少しここで亡き人を想おうと思います」
「そうか。そろそろ日が落ちる、気をつけるのだぞ」
 老はそういって墓所を離れた。
 残るのは、ロザライン一人だった。
「おお、ロミオ、ロミオ。どうしてあなたはロミオなの」
 ロザラインはつぶやいた。
 この墓所は一族が復活の日まで眠る地であると共に、自分の愛した男の臨終の地でもあった。
「ねえ、ロミオ。あなたは、考えた事があるかしら。激情に身を任せ、あなたの愛を受け入れれば、キャピュレット家のものは黙っていなかったでしょう。あなたの名誉が損なわれるのが目に見えていたから、避けていました」
 つぶやくロザラインの目を涙が流れていく。
「もしジュリエットに、言い寄られて困っているといっていたら、ティバルトにあなたは私の愛する人だと話していたら変わっていたのでしょうか」
 ただ風が吹いていく。太陽は落ち、夜が来る。
「ねえロミオ、ジュリエットあなたたちの物語は永遠に語られる。でも、その影にもう一つこの愛があったのを知るものはいないでしょう」
posted by 作者 at 20:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 掌編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月14日

魔法使いの弟子

yuiyaさん  http://twitter.com/i_yuiya の作成してくだすった

縛りSSったー 三題噺ったー http://shindanmaker.com/15896

tikutakuは「窓」「夏」「魔法使いの弟子」に関わる、「登場人物1人限定」のSSを6ツイート以内で書きなさい。


載せた奴
行きたい所はどこです? 行けるわけないと。夢がないですね。じゃあ窓の向こうに世界があると考えて開けてみて。え、夏空が広がっている。窓が違っているんです。これを見ているのWinですよね。ね、色々覗けますよ。え、使ってるのはAndroid。なら電気羊以外の夢を見るのは難しいですね。



文字を減らした奴
行ってみたい所はどこです? 行けるわけないと。夢がないな。でも、向こうに世界があると考えて開けてみて。え、夏空が広がっているだけ。窓が違っているんです。これを見ているのWindowsですよね。ね、どこでも覗けますよ。え、使ってるのはアンドロイド。電気羊以外の夢を見るのは難しいですね


最初の奴
 行ってみたい所はどこです? 行けるわけないと。夢がないですね。それに魔法使いの弟子たる私には無理だろうと。それは確かにそうですけど。まあ、窓の向こうにそんな場所があるって想像してみてください。そして開けてみてください。え、夏の空が広がっているだけ。開けた窓が違っているんです。これを見ているのは? そうWindowsですよね。ね、どこでも覗けますよ。最近は国を倒すくらいの勢いらしいですから。え、窓じゃなくああ林檎でしたか。違う。え、アンドロイド。だとすると電気羊以外の夢を見るのは難しいですね。

 省略しきってから6ツイートな事に気づいた。今度は同じ題で長いのを書こうと思います。
posted by 作者 at 00:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 掌編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月10日

百物語用怪談1

 子供の頃、学校でたわいない幽霊話を聞いたことがあると思います。笑う音楽家を初め七不思議とかそういうお話です。ところがうちはなかったんで作ったんです。
 弟が十離れてるんで、自分が作った話が残っているのか聞いたんです。悲しいことに何も残ってませんでした。
 しかしこういうものを見たという話を始めたんです。
 オウムのお化けを見たっていうんですね。これは変わっていると思って、よく聞くと喋る鳥じゃなくて、風の谷のナウシカにでてくるそれですね。
 得体のしれない物が出て弟は怖かったそうです。実のところ怖かったのは自分もで。
 自分が小学校低学年の頃、学校でカブトガニを飼っていたんですがやはり学校では無理で死んでしまいまして。所で、その王蠱が出た場所を聞くとずばり自分が子供の頃に王蠱の話を聞いた場所でした。
 やはりそういうのがひっかかりやすい場所なのですかね。

 場所というか、やはり霊が出やすい場所ってのはあるんですね。
 うちの家の近所はちゃんとした地名もあるんですが、古くから住んでいる町の方は堂山と呼びます。今でこそなんて事はない住宅地ですがもともとは海沿いの外れのちょっとした丘の辺りにお寺がたくさん集まっているからなんですね。
 そこもまた人魂や浮いている生首が出るなんて話がありました。あるのがお寺やら教会、人が住まず潰れてしまった社宅があったもので、ああ、そうなんだと納得していた覚えがあります。
 自分が高校生くらいになった頃、社宅を取り壊して公民館になることになりました。工事は直ぐに止まりました。幽霊ではないんです。白骨死体が十数体。大騒ぎになりました。調べてみると古くて事件性はないのは分かった。堂山だからと納得したいところですが、どれも首が無かったんですね。どうも堂山の一角には打ち首にした後の躯を置く場所であったらしい。堂山というのはお堂がある山ではなく、胴を葬る山だったのです。
 一昨年、公民館で堂山近辺の歴史を話す機会があったんです。すると、事務の方は窓の方を向いて、「たまに夜中にそこを人影がよぎるんですよ」と。
posted by 作者 at 23:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | 掌編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月23日

デビルちゃん

ほめられてのびるらじおPP http://www.onsen.ag/program/home/
 というwebラジオ番組の中で、パーソナリティーのお二人とゲストさまが、
ハガキでから選ばれた、キャラクター、シチュエーション、セリフから即興劇を
する非常にハードなコーナーがあります。
 そのパーソナリティーのお一人の風音さまを模したbotがいらっしゃいまして、
そこに頼むとカスタマイズネタを届けてくれます。

 加えて、yuiyaさん  http://twitter.com/i_yuiya の作成してくだすった

縛りSSったー 三題噺ったー http://shindanmaker.com/15896


 この2つからネタとりして話を作ってみました。

 

 私、デビルちゃん。仕事は小さくなって忍び込んで人間に悪事を働かす事なの(世界の妖怪図鑑 デビル参照)。
 今日も人間の世界に来て、獲物を探しているわ。
 晴天すぎて全く嫌になる空だわ。誰かいないかしら。
 あそこにいる男。あ、とってもピュアそう。よし、あの銭湯の前でヨーグルトを持っている男にとりついて、悪いことをさせてやるわ。
「えい」
「あれ、急に暴れたくなってきた」
 たちまち警察が来て取り押さえられる男。連行されていく男。
 やったわ。これでまた一つポイントゲット。
 さあ、地獄に帰ろうっと。
「やりましたよ、デビルさま。え、駄目どうしてです・・・あの男はこれから銭湯に飛びこんで、あの瓶詰めの白くてどろどろしたものをまくつもりだった。それがばれてもっと駄目な人生を送るはずだった。
 え、罰ですか・・・いやー」
 血の池に沈められるデビルちゃん。
「もういいよね。私頑張ったよね。。。」 
posted by 作者 at 23:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 掌編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月26日

寒い夜 風の音に思い出すお話



 あるところに美しい女御がおりました。
 帝のご寵愛を受け、都一の佳人の名をほしいままにしておりました。
 しかし、市井の人はその姿を見ることもなく、かぐや姫や乙姫のように、物語の如くその姿を思うだけでした。
 それは朝廷に仕えるものも同じ事で、内裏の奥深くにいらっしゃる女御を見ることはありませんでした。
 庭師の翁もその一人でした。
 翁は官職こそない身でありましたが、その腕は確かなもので、見識がないものでも、仕事を見れば見事さに、翁の手による物であると一目でわかったといいます。

 まだ夜も明けきれぬある朝の事です。翁は思っていたよりも早く落ちてきた霜に、庭の様子を見に出仕して参っておりました。
 幸い庭の草木は日頃からの丹精か、欠ける事なく美しい姿を見せています。
 安心したせいか先程まで感じていなかった寒さが、翁の身に染みてまいります。 
 翁は四阿の一つで寒さをしのぐ事にしました。
 四阿には先客がおりました。しかし骨の髄まで染みる寒さに翁は気付くことはなかったのです。
 翁は小さく声を漏らしました。
 雨意雲情の後なのでしょう。細い腰が着崩れた衣の内側から見え、翁は見てはならぬものを見たと、すばやく身を翻しました。
「だれぞ」
 いらっしゃたのは女御でございました。

 内裏の庭が俄かに荒れ始めました。いえ、庭師の数は多く、そんな事はあるわけはありません。
 しかし精彩がなくなったのは誰の眼にもわかるものでした。
 女御もそれに気付かれ、官女の一人に尋ねますと
「庭師の翁が病だとか」
 官女はそう申しますと何やら用事があると離れていきます。
 いつまでも庭はどこか精細を欠いたままでした。思い切って女御は尋ねました。
「恋患いと聞いております」
 その答えは自分のあさましい姿を見て懸想していると、女御には思われたのでございます。

 翁は部屋で転がっておりました。
 おきていれば女御の事が思い出され、眼を閉じればまぶたの裏に姿がありありと見えます。
 女御の天女のようなお姿が離れないのです。
「失礼いたします」
 翁のところに届けられたのは一つの包みでした。あけてみれば鼓が一つ。
「この鼓の音が聞こえましたら、女御は四阿にお姿をお見せするとのことでございます」
 翁は喜びながら四阿に赴き、鼓をたたきました。鼓から漏れる音は鈍くとても女御のいらっしゃる奥まで聞こえるとは思えませんでした。
 翁は自分のたたき方が悪いのだと、再び鼓をたたきます。しかし、その鼓は皮がしっかりと張っておらず決してならないものだったのです。
 それでも翁は一心に鼓を叩きます。いつまでも鼓とは思えない鈍い音が響いておりましたが、いつの間にか小さくなり、静まりかえりました。

 女御の様子が物狂いだと思われるようになったのは霜が毎朝、庭を白く飾る頃でございました。
 すきま風の音や、風が戸を揺らす音。そんな音を聞く度に鼓の音がするとおっしゃるのです。
 女御が物狂いになったと噂されるようになったのはそれからでございます。
 ある夜の事、小雪のちらつく中、女御は庭を歩いておりました。
 冬になったということもありましたが、翁の世話をすっかりうけなくなった庭は荒涼としております。
 女御は四阿にこられました。
 四阿では鼓を叩くものがおります。それは鼓を鳴らしている翁の姿でした。
「やっとこられました」


 女御の亡骸が見つかったのは冬の朝でございました。その側には
叩き続けて亡くなった翁の鼓が転がっておりました。
 歪んだ美しさともうしますのか、死しても女御は美しくあられました。
posted by 作者 at 05:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 掌編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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